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タイランドと猫とわたし

『わたしのマトカ』 片桐はいり

読みました。とある古本屋で見つけてとびついて買ったん。まだきれいで、なんだ、前の人は買って読まずに売ったんか?と思ってしまうぐらい。

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 「はじめに」によると、どうやらこれは著者、片桐はいり初の書き物らしい。そんなことは微塵も感じさせない、小気味のいいテンポ、にやりとさせるタイミング、ふむと考えさせられる視点のするどさ、などなど。役者さんって、やっぱり、言葉のプロなんですね。

 かの映画、「かもめ食堂」のロケ(この言葉って何の略だ?「ロケーション」?でもそれって何だ?)で訪れたフィンランドでの時間が、彼女の体験を交えて書かれています。基本は、文化の違いや感覚の違いによるどたばたや心温まるエピソード。役者のロケ中の話なんて、世界が違いすぎて、現実味がない。ということはなく、旅行好きで現地の尺度でものを見ることの好きな彼女が、自らの体を捧げて(?)巻き起こした、貴重なお話たちです。

 わたしは、生のサヤエンドウが食べたくなったぞ。

 そして、もちろんフィンランドに行きたくなった。

 周りのヨーロッパ人たちは、意外にも北欧にはいいイメージを持っていません。「人を憂鬱にさせる」とか「ろくな食べ物がない」とか。

しかし、

○人見知りで表情が普段は皆無だけど、一度知り合うとなつっこくて仕方のないところとか(「無表情な人とは知り合う気が起きないじゃないか」という反論をされる…)

○野菜がおいしくて仕方のないところとか(「いい加減肉を食え」と叱咤される…)

○森が深くてムーミンがいるところとか(「だから憂鬱になるって幻想を見るって言っただろう」…)

○働くことと休むことがきちんと保証されているところとか(「それはいい!」)

 いろいろわたしの好奇心をくすぐることは、あります。旅行でうろうろ、よりも、滞在型のほうが身にしみて楽しめる土地かもしれませんね。よしよし。

 最後のくだりのあたり、帰国してから自分がフィンランドのスピードと人の心の温度に、まだ浸っていることを著者が気づくところ。

 レジでゆったり支払っていると後ろに列ができて、店員が申し訳なさそうな顔を後ろの列にいる客たちに向ける。それは、お前とろいんじゃ、という合図。周りの空気読めや、という警告とも言えなくもない。しかし、それに、「これだから日本人は小さい」とか、「ルールとか規律とかに縛られ過ぎ、くだらない」とか、腹を立てたり、けなしたりすることは、フィンランド帰りの著者は、しない。「ほんとに、せっかちなんだから」という「愛おしさのような気持ち」を持って、さらには、待たせた周囲の人たちに「ごめんなさいね」とまで言って、その場を去る。

 あー、わたしもこれで行こう。と思った。こうでなきゃ、と。

 旅行関係のエッセイって、一度読んだら満足、のことが多いですが、これはまた読みたいと思いました。読んで、はい、古本屋行き、というルートにのせないこと、決定。

= = =
 著者の弟さんがグアテマラにいることは、定期購読中の雑誌Coyote No.81 で知っていました。どうやら、『グアテマラの弟』というのも、この本のあとに書かれたみたいです。これは読まねば。

 あぁ、これをあの古本屋に持って来てくれた誰かさん、この本も同じように、してくれないかなー。
by mamemama_blog | 2011-02-06 19:10 | 本とか
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