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タイランドと猫とわたし

Trip to Cambodia 3 -忘れられたけど忘れられない

 カンボジア旅行ノート第三弾。

 1秒は、1分の60分の1で、1時間の360分の1で、1日の8640分の1で、それは試験勉強をする広島の中学生から、ビーチで寝そべるドイツ人旅行者まで、世界中のどの人にとっても、どこでも、どの瞬間でも、同じ長さのはずなわけで。でも、ときどき、「1秒ってけっこう長い」と思うことがあります。1秒の間に、いろんなことが起こって、いろんなことを考えて、いろんなことが諦められて、いろんなことが決められる。

 そうしみじみ思うことがあったのは、散々遊んだSihanouk villeからKampotをへて、Phnom Penhに戻るその道中。

<これを読んだら、違う視点で書かれた
rainのblogに行ってね>



<登場人物>
mamemama - わたし。Bangkokから遊びに来たバックパッカー。
rain - mamemamaの大学院時代の親友。日本人。KL在住。Kホックさんの妻。愛する旦那に会いにカンボに帰省。目をつむらないと橋が渡れない。
Kホックさん - rainの旦那。カンボジア人。Phnom Penh在住。Kampotで子ども時代を過ごしたからかどうか、とにかく果物に目がない。

<mamemamaが旅行にたったのは、クリスマスの日。Phnom Penhに着いて、rainたちに会って、でもすぐに別れて、ひとりで南のSihanouk villeに行って、ダイビングを満喫して、でそこでrainたちに再会して、それからのお話です>

 2008年1月1日。初日の出を見ることもなく、それぞれきちんと眠り、わたしたちは、Sihanouk villeで朝ご飯を食べて、食後のお茶もして、Kampotに向かいました。わたしはダイビングを楽しんだあとで、まだ夢心地だし、rain夫婦もちょっと日焼けしたりして、小旅行を楽しんでいて、つまり、3人とも、ご機嫌。

 車のハンドルを握るのは、Kホックさん。助手席には妻のrain。後ろの席には、わたし。でも、二人の間に前のめりになるように座ります。というのも、わたしはご機嫌で、それに、Kホックさんが流すグループサウンズのCDを口ずさみたいから。

♪ぼくの好きなせんせー ぼくの好きなおじさーん♪(by セイシロー)

 Kampotは、Kホックさんの生地。なんとKホックさんは、この辺りの土地をいくらか所有しています!どうやら、彼の人生は、Phnom Penhの大学で教鞭をとるだけで終わらないらしい。リゾート開発が進むこの区画。年々上がる土地代に、「あそこは去年売ってしまいました(残念)」とか、「ここは今高いです(えっへん)」とか、実はいろいろ考えている様子を匂わせます。「わたしはここにヴィラをつくります」と、Kホック氏。わたしは、彼のおっとりした日本語のなかにも、意思を感じました。rain、庭の花のアレンジぐらいしか口を出さない君は、どれほど彼を信じているのか?

 
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(向こうがBokoh山。土地を紹介するKホックさんとrain。むこうに小さく見える白い車がKホックさんの車。この車も実は登場人物だな。なんでかって?続きを読んでください)

 カンボジアの、日本でいう富士山的ポジションの、Bokoh山。その山が見下ろすこの町は、一面に草が広がり、そこには、牛さんたちが、何やってんだか自分でも分かなってないだろう顔をして、ぼーっと寝ころんでます。でも、ここにはロープーウェーがいずれできて、トレッキングの道も整備されて、海沿いにはフランス人が素敵なリゾートホテルをオープンするとか。「ここからあそこまで、2万ドルです」とKホックさんが言う区画は、だだっぴろくて、奨学金の返済(涙)さえなければ、本気で購入を考えてもいいぐらい。これから、どんどん元気になるよー、という感じの、きらきらの将来が待ちかまえている、そんなところ。

 とはいえ、今は、とてつもない田舎。

 途中で、滝に寄ったり(乾期のためしょぼすぎらしく結局行かず)、シーフードに舌鼓をうったりしながらも、基本は、曲がり角も信号もない道を、ただ走るばかり。

 夫婦は、カンボジア・ビギナーのわたしに、いろいろとカンボジアの果物を紹介してくれます。Bangkokでも、昔住んでいたKLでも、Honoluluでも見たことのない果物たち。いや、それにかこつけて、Kホックさんが食べたいだけなのか?Kホックさんは、果物のことになると、我が道を進みます。「はっ」と気がついたときには、もう値段交渉に入り、そしてお金を握っている。

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(あまりに購入があっという間だったので、カメラを向けたときには、もうお盆の上のミルクフルーツが全部プラスティックバックに入れられていた。ねえ、ミルクフルーツって、どんなんだったっけ?)

 普通に走って3時間ぐらいの道のり。それに加えて、こういうことをしたり、道ばたのココナッツジューススタンドでジュースを飲んだりしているものだから、わたしたちのドライブはスローです。

 だから、トイレにも行きたくなる。

 Kホックさんはいいよ。草むらで、牛さんたちを背中に用を足せばいいから。でも、わたしたち女子は、そうもいかない。

 だから、やっとこさ辿り着いた、人の住む区画(町とも村とも呼べない)で、トイレを借りました。そこは、薬局兼病院みたいなところ。おにーちゃんが、「汚くてごめんねー」と優しい笑顔を見せてくれながら、奥のトイレに案内してくれました。

 わたしは、東南アジアに慣れているし、汚いのはたいてい平気だし、地元の人と、喋るのが好き。にこっと笑ったら、コミュニケーションがするするっと進むのを体で知ってます。ここに住んでいるおにーちゃんは、きっと日本人なんてこれまで話したことなかっただろうけど、ここがあれでね、あそこはあんなんでね、と親切に病院を説明してくれます。うんうん。おにーちゃん、いい人だね。

 でも、わたしは、ただここを通り過ぎる、ただの旅人だからね。おにーちゃん、バイバイ。オークン(ありがと)。

 汚いのはたいてい平気、と書いたけれど、手はきれいに保っていたいわたしは、Kホックさんの車の後部座席から、自分の水のペットボトルをとって、車の後ろで、ジョボジョボと手を洗っていました。

 そしたらね、車が動いたん。

 「なんで動きよるん?」 「走りよる?」  「あ、進みよる」  「走るべき?」  「でも、手ぇ洗いたい」  「叫ぶべき?」  「いや」  「今走ったら間に合う?」  「間に合うよ。まだ遅いもん」  「ちょっと進んだよ」  「間に合うよ」  「じゃあ走ったら?」  「走りたくないー」  「でも行ってしもーたよ」

 数秒だったかもしれないけど、いっぱい自分と話した。足は、動かず。

 Kホックさんの車は、赤土の道を進んでいく。だんだん小さくなっていく。ペットボトルの中の残り少なくなった水を見て、これだけの水でわたしはこれからどのくらい生き延びられるんだろう?と、へんてこなことを思ったりしました。わたしは、いつまでここにいることになるんだろう?これまでの楽しかった旅路を思って、この国も悪くない、と、楽観的でもありました。

 道でひとりたたずむわたしを見つけて、薬局兼病院からおにーちゃんがやってきました。"They forgot you."と彼は言ったよ。「今晩どこで休むの?」「うちならベットはたくさんあるよ」「それともバイクで追いかけてあげようか?」おにーちゃんは、やさしい。

 これまで、自分は、いくぶんマイノリティーな人生を歩んできたけれど、それが、こんなカンボジアの小さな集落で薬局を営むというところにおさまるのか。それも悪くないのかな。

 - - - 20年後。ずいぶん発展したこのあたり。観光客もときどき立ち寄るようになる。日本人も、ときどき。お腹を壊した京都の大学生バックパッカーが、きょろきょろしていると、日本語の看板を下げた薬局が。中に入ると、日に焼けているけど、でも、日本人だと分かる顔のおばちゃんが、「どしたんね」と意外にも広島弁で聞いてくる。その横には、見事な黒い毛をした猫が。正露丸を紙に包んでくれたおばちゃんに、大学生がおそるおそる訪ねる。「どうして、ここに住んだはるんですか?」。「わたしもねー、そういうつもりじゃなかったんよ、ほんまはねー。でもね・・・」遠い目をして、やはり広島弁で語り始めるおばちゃん。- - -

 ちょい待ちっ。わたしは、どう見ても、ここに馴染んでない。立派なトレッキングシューズを履き、洗濯されて鮮やかな色をしたTシャツを着て、首に巻く布も、カンボジア人のこなれたものから、ほど遠い。

 いや、そーゆーことじゃないよっ。後部座席に連れがいないということに、そんなに人は気がつかないものか?わたしは、ずっと、後ろからがらがら声で歌ったり、すれ違う、ありえない風景にコメントしたり、してたぞ。それがなくなったことに、彼らは気がつかないか?

 おにーちゃんが、近所の人に、あーでこーでと説明し始めたころ、見たことのある車がこっちに近づいてきました。

 「ごーめーーーーん」

 人生は、そう簡単に劇的な方向へ転がるもんじゃないみたい。わたしは、カンボジアに暮らさないし、薬局も営まない。Phnom Penhに戻って、そしてBangkokに戻る。

 何秒間ぐらいだったんじゃろ?何分ぐらいだったんじゃろ?ちょっとの間、いろんなことを考えました。取り残されたけど、あたふたしなかった、焦ることが極端にできないスローペースなわたし。足は全然動かなかった。でも、頭の中で旅をしました。

 「この辺りで、mamemamaちゃんがいないー!って気がついたんだよー」と、あとでrainとKホックさんが教えてくれた地点は、結構おにーちゃんの薬局兼病院から遠かったけど、ま、いいか。

 忘れられた人より、忘れた人のほうが、動転したんだって。あはは。

 いつか、わたしがまたカンボジアにやってきて、Sihanouk villeでダイビングを楽しんで、その帰り、本当に発展してしまったKampotを通り過ぎるとき、また、おにーちゃんの薬局兼病院が見つけられるかな。

 忘れられてしまったけど、忘れられない旅の1ページなのでした。rain、このネタはわたしたちが会うたびに持ち出すだろうよ。
by mamemama_blog | 2008-01-12 20:15 |
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